2015年7月15日水曜日

花鳥風月05/30(後)

▼第8試合シングルマッチ30分1本勝負
○矢郷良明(VKF)(14分7秒 ツームストン・パイルドライバー→体固め)ジョシュ・オブライエン(東京花鳥風月)●
これを書いている現在、矢郷選手がGMを務めているプロレス団体VKFは、新木場などで定期的に興行を打っており、花鳥風月所属選手も招かれてファイトする関係にあります。
矢郷選手は空手も修得されており、ジョシュ選手のパワーファイトに蹴り技で対抗する構図となりますが、徐々に体格差で圧倒していき、得意とするパイルドライバーで決着となりました。
 
▼セミファイナル タッグマッチ30分1本勝負
○山本裕次郎(鎌倉花鳥風月)&梅沢菊次郎(プロレスリング・アライブ)(15分15秒 レフェリーストップ)宮本裕向(666)&●塚本拓海
メインに負けない豪華なカード!
四人それぞれが、譲れないプライドを持つプロレスラーであり、引いて間を外すテクニックを使う塚本選手にしても、大日本のリングで激闘を経てきた自負心を身に着けています。





 
 
パワーファイトとレスリングテクニックを身上とする宮本選手と梅沢選手がぶつかり合えば、バチバチとサブミッションのバトラーツファイターである山本選手が蹴りを放ち、これを受けた塚本選手が強烈な投げ技で切り返していく!

 フィニッシュは山本選手の鮮やかな複合関節技でした。いつか山本選手と宮本選手のシングルを見てみたいなーと。


▼メインイベント シングルマッチ30分1本勝負
●勝村周一朗(鎌倉花鳥風月)(6分59秒 ダブルアームスープレックス→エビ固め)○鈴木秀樹

メインの大一番。鈴木秀樹選手はWRESTLE-1のベルトを引っ提げ、人間風車ビル・ロビンソンのテーマに乗って登場。

入場曲って大事、と思わされますね。かっこいい曲です。しかも弟子であるプロレスラーが師匠のテーマを引き継いで、現在もなお使っているというのは、正論暴君キャラという装飾の中に秘めた、鈴木秀樹というプロレスラーの本質の一端ではないかな、なんて。
勝村選手も自身のテーマ曲で入場。ついに両雄激突!
契約体重、階級差など、厳密な制限のあるMMA等では実現しないだろう、プロレスのリングならではの軽量級と重量級の対決。
勝村選手は、しかしそれを言いわけにしてたまるかとばかり、自身の武器である、蹴りやグラウンドテクニックで鈴木秀樹という要塞に挑んでいきました。


一方の鈴木選手は、これまでどおり、クラシカルな王道のプロレスで迎え撃ちます。いわゆる見慣れた技の数々――捕まえ、体重をかけて潰し、隙あらば投げる。シンプルだけど、そこに強みがあり、隠れた技術の機微がある。鈴木選手は決して器用なレスラーではありませんが、勝村選手がプロレスラーに求める「強さ」に関してだけは、今更言うまでもないくらいのレベルに達しています。観客の誰もが、好き嫌いはともかくとして「あ、この人は強い」と理解してしまう迫力があるのです。
そういう、望んだ相手だからこそ、勝村選手も対策を練って勝ちに行きました。寝かせてからの関節技にトライし、更には投げ技をくらいそうになる直前、これまで幾多の強豪を仕留めてきた勝村選手必殺のニンジャチョークを繰り出し、決着か!? と会場を熱くさせました。
 
残念ながら不発に終わり、逆襲のバックブリーカー、そして鈴木選手の代名詞であるダブルアームスープレックスをくらってしまい、惜しくもスリーカウント。
短いながらも濃いファイトで、これに満足したのか鈴木選手も恒例の、対戦相手の欠点を責めていくいつもの口撃はしませんでした。
もっとも直後のロビン選手との絡みに関しては、素で驚いていたように見えましたが。
――ダブルアームスープレックス。
私はプロレスの技には格があり、使い手によって輝きの色合いを異にしていると思っています。あるレスラーにしてみれば単なるつなぎの技でしかないそれが、別なレスラーにとっては絶対のフィニッシュホールドとして、観客を酔わせ、対戦相手をマットに沈める。まさしく鈴木選手が「育てた」ダブルアームスープレックスは美しく、必殺の域に磨き上げられた芸術品でした。
……ちょっと、ロビンさんが心配です。

三周年記念興行。花鳥風月エースがまさかの敗戦という幕切れでしたが、いつもとは異なるきれいな会場、激しいファイトに満足のいく内容でした。
シアタープロレス花鳥風月の、更なる飛躍に期待しています。

花鳥風月05/30(中)

▼第4試合 東京花鳥風月練習生・川島真織デビュー査定マッチ5分1本勝負
△清水基嗣(SECRET BASE)(時間切れ引き分け)東京花鳥風月練習生・川島真織△
女子プロレスではよく見かける、十代でのプロレスラーデビューですが、男子のほうとなると、私の乏しい知識では記憶になく、ぱっと出てくるのは中嶋勝彦選手くらい。私が花鳥風月を見るようになった頃には、既に練習生だった彼は、かなり長い期間、エキシビションマッチという蓋に押さえつけられてきたことになります。見るたびにからだも仕上がってきて、本当ならすぐにでも査定マッチが組まれてもおかしくないよなあと感じていましたが、そこはやはり、度々起こってしまう事故を懸念したのでしょうか。
例えば柔道。初段を取得した人間であっても、投げられて脊髄、頸椎をやってしまい、日常生活を送るうえで深刻な支障を抱えることになった人がどれだけいるか――。
日本のプロレスは、一時期よりは危険な技を軽々に使用しない傾向にはあるものの、半端な受け身しか取れないようではすぐに壊れてしまうし、最悪の場合、命を失うことだって、ないとは言い切れないのです。そしてそうなってしまったら、周囲にもたらす有形無形のマイナス効果は計り知れません。
「最年少の若手」という肩書きは、リングに活気を生みます。
そんな喉から手が出る起爆剤の投入を我慢し続け、花鳥風月は彼がプロレスラーとして必要な諸々を学び、鍛え上げるのを待っていたのかもしれません。直前のマッチョ選手とのエキシビションマッチは、まさに潮が満ちたことを感じさせるものがありました。
査定試合の対戦相手は、清水基嗣選手。
花鳥風月とは何かと関わりの深い、プロレス秘密基地『SECRET BASE』の代表。
組み合わせを見た時、厳しいなあと思いました。
懐の深いベテランではありますが、まだまだ尖った、勢いのあるファイトが持ち味の選手です。
しかも会場は、いつもの王子を離れたヒューリックホール。加えて査定試合の審判の一人は、もう絶対辛口間違いなしじゃん的な、鈴木秀樹選手と来たもんです。
(また、結果発表時に明かされたことですが、親御さんも会場で見守っていたとか)
案の定、いつもより動きが固く、もし私が今回だけの一見さんであったなら、合格票を投じていたかどうか。
ですが川島真織の、これまでのプロレスに向き合う姿勢を見てきた私としては、やっぱり早く一歩を踏み出してほしかったわけで。
本当、いいプロレスラーになってもらいたいな、と。

▼第5試合 ウルトラマンロビンデビュー25周年記念30分1ヒーローショー
○ウルトラマンロビン(SGP名古屋花鳥風月)&宇宙銀河戦士アンドロス(13分48秒ダイビングボディアタック→片エビ固め)清水基嗣(SECRET BASE)&●神楽(666)

赤と青の共演!
飄々とした佇まいの、しかし似て非なる二人のウルトラ系レスラー。
例によって宇宙選手がマイクで前説を始め、その隙をついて清水選手と神楽選手が勝手に試合をスタートさせてしまう流れ。
清水選手は間髪入れずダブルヘッダーとなりましたが、さすがのファイトを見せてくれました。

▼第6試合 シングルマッチ30分1本勝負
○新井健一郎(DRAGON GATE)(7分8秒 ジャンピングパイルドライバー→体固め)江利川祐(東京花鳥風月)●

役者の違いに唸らされる内容となりました。まさにアラケン劇場。
試合前のマイクアピール、江利川選手を煽る一方で、この試合がどういうものなのかを、初見さんには分かりやすく、そして常連には改めて説明しているのです。んで、それがまた、いちいち納得せざるを得ないという! 新井選手のプロ意識は本当に素晴らしいと思います。プロレスラーとしてのレベルの違いは明確なれど、だからといって自分本位なファイトに終始することなく江利川選手と向き合い、試合をつくっていくのです。
そして「ここまで」と見切りをつけるや否や、ギアを上げて一気に引き離し、ゴールする。
デビュー戦に比べれば、江利川選手は強くなりました。しかしまだ、新井選手と競り合うまでには至っていません。気持ちは負けてないにしても、技の一つ一つの練度が浅く、何より試合を展開させる主導権を取れずにいることが、見ていてもどかしく感じてしまいます。
課題は見えているわけで、あとはもう、江利川選手の努力次第。がんばってほしいです。

▼第7試合 タッグマッチ3分1本勝負
 「ハットトリック」服部健太(東京花鳥風月)&○三尾祥久(東京花鳥風月)withスペシャルゲスト山本淳一(元光GENJI)(12分16秒 ダイビングボディプレス)ウルフ・スター☆&●スペースレッド(666)

歌謡ショー始まった!
当時の光GENJIの凄さを知るだけに、「どういうつながりからの出演なんだろう」という疑問だけが先行していたのですが、歌とプロレスの線引きをしてくれていて、安心できました。
一方で今回、初めて見ることになったウルフ・スター選手なのですが、正直よくわからない選手だーという印象で、これは現在も変わっていません。どういう選手で、どんな背景を持っているのか……。わざわざ自己紹介みたいなことをする必要はないのですが、入場時に配布されるチラシなどにでも経歴が書かれているといいなーとかとか。



試合はハットトリックが持ち味を発揮して快勝。いやはや、こちらの赤と青は実に鮮やかな連携を決めてくれました!